日々是好日(校長室だより)

2021年3月の記事一覧

演劇部 ラジオ取材

本日、TBSラジオにて演劇部のインタビューが放送されました。

放送されたのは、TBSラジオ「萩上チキ・Session」という番組で「高校生と東日本大震災」というテーマでの話の中で福島県のふたば未来学園の取組とともに取り上げられました。

演劇部が埼玉県高等学校演劇中央発表会で演じた「ガッコの階段物語」は最優秀賞(県優勝)をいただき、関東大会出場を果たしたのですが、そのストーリーでは東日本大震災がストーリーのもとになっています。発表を見ていた記者の方がぜひ話を聞きたいということで今回のインタビューとなりました。

生徒たちがこの作品を演じるにあたり「真摯に取り組まなくてはならない」という想いで、部員が取り組んでいたことなどがわかりました。だからこそ、迫力ある演技ができたのだと思います。

震災から10年、演劇の力で語り継ぐことも大切なことと感じました。

 

言の葉

 

卒業式

 

本日、天候にも恵まれ令和2年度卒業証書授与式を実施しました。

緊急事態宣言下のため、保護者1名のみの参加とし、式の内容も見直して感染拡大防止対策のもと実施です。

昨年度は生徒だけの卒業式でしたが、今年度は保護者の方にも見ていただくことができ、ほっとしました。

少しでも早く、コロナウイルスの感染拡大が終息することを願います。

言の葉

 社会では、人は人をグループ分けしようとします。人種であったり、国籍であったり、性別であったり、これらの分類を時に優劣をつけようと差別することすらあります。しかし生物的な観点からゲノムデータを見ると、ひとりひとりが貴重な存在であり、優劣をつけるといった発想にはなりません。

「生命科学的思考」 高橋祥子(生命科学者、ジーンクエスト代表取締役) p53

 

卒業証書授与式 式辞

令和2年度卒業式 校長式辞

 桜の芽も色づき、校庭に吹く風に春の柔らかさを感じる、今日の佳き日、多くの保護者の皆様に御出席いただき「第41回卒業証書授与式」を挙行できますことは、卒業生はもとより、私たち教職員にとりましてもこの上ない喜びでございます。これまで支えていただいた皆様に心より感謝申し上げます。
 ただいま、卒業証書を授与した三一四名の卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。本校の卒業生は皆さんを加えて、一万五千百六十一名となりました。
 皆さんの高校生活最後の年は 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一斉休校や学校行事の中止、部活動最後の大会や発表会の中止など、不完全燃焼のまま卒業を迎えた人もいることでしょう。

 コロナウイルスの感染拡大はいまだ収束しておらず、世界中で多くの方が命を落としました。こんな時代だからこそと他人のために使命感をもち懸命に闘う人、一方、残念ながらうまくいかない理由をすべてコロナや他人のせいと周囲の人を傷つけてしまう人がいます。もしかしたら、私たちの多くは、そのどちらの面も自分自身の内に抱え、心の中で葛藤し、大きなストレスを感じていたのではないでしょうか。
しかし、この時代で多くの経験をしたからこそ、皆さんは確実に、強く、たくましくなりました。いつか振り返ったとき、高校生時代にこの経験ができてよかったと思えることを心より願います。

 世界を見渡すと、感染症の拡大や、自然災害、地域紛争など絶えることのない不安が続いています。2015年、国連本部で「持続可能な開発サミット」が開催され193加盟国の全会一致でSDGsが採択されました。No one will be left behind(誰一人として取り残さない)を理念として提唱され、2030年までに達成するとした17のゴールは、各国が努力しているものの様々な課題があり達成は厳しい状況です。

 今、日本だけでなく、世界においても、先行き不透明な時代と言われています。しかし、考えてみれば過去こそ確定しているものの、現在は進行中であり、未来は不確定「不透明」なものです。もっと安心して先が見通せる社会に皆さんを送り出せなかったことは、一社会人として悔やまれてなりませんが、不透明がゆえに、大いなる可能性も秘めていると考えてはいかがでしょうか。自分と未来は変えられる。皆さんが、未来に大きく飛躍することを願います。

 その未来への旅立ちにあたり一つお話しして餞の言葉としたします。筑波大学名誉教授の門脇厚司氏の「社会力を育てる」にこんな指摘があります。日本では「お互いさま」を美徳に互いに助け合ってきたはずであったのに、現状は、自己責任を名目に弱者を社会的に排除しようとする傾向が顕著になっていることが問題である、というものです。門脇氏はそこで、この問題を適切に解決するために「社会力」を身に着ける必要性を提唱されます。社会力とは「人が人とつながり、社会を作る力」と定義しています。「社会を作る力」とは「自分も社会の一員であるという自覚を持ち、他者の立場に立って物事を考え、他者の意図や気持ちを理解し、他者を思いやりつつ、自らの意志で他者と協力して物事を行うことができる資質能力のことである。としています。

 私は、その「社会力」の基礎となるものは何かと考えたとき、思い浮かぶのは「忠恕」の心です。「忠恕」というのは「論語」にある言葉で、孔子の考える最高の徳である「仁」を自分自身の思いやりに正直である「忠」と、他人の苦境に思いやりを持つ「恕」によって解き明かし、それらをまとめて他人に対する暖かな思いやりの情義で「忠恕」と説明しています。
 わかりやすく言えば、「まごころと思いやり」これこそが最高の徳であると説いています。この「忠恕」という言葉は、本県出身、近代日本の経済発展に貢献し「道徳経済合一説」を打ち立て、次の一万円札の肖像となる渋沢栄一翁の好んだ言葉でもあります。

 「忠恕~まごころと思いやり」と言葉にしてしまうと、特別な言葉ではなく、新鮮な響きもありません。しかし、能力主義と個人主義からなる今日の産業社会は、知らず知らずのうちに、私たちにこの忠恕の心を忘れさせてしまったのではないか「お互いさま」の美徳をどこかに追いやってしまったのではないかと思えるのです。残念ながら、自由をはき違えて勝手気ままな行動をする人や公共心に欠ける人、ちょっとしたことで相手のことを許すことができない不寛容な人、等々がの報道が後を絶ちません。だからこそあえて「忠恕」の心の大切さを強く感じるのです。

 自分が幸せな人生を歩みたいと思うのと同様に他者もまた幸せに生きたいと願っている、という考えに立って行動してほしいと思います。ぜひ、忠恕の心を根本に据えた、社会力のある人へと自己変革を遂げ、よりよい社会づくりに貢献できる人になることを強く望みます。

 最後になりましたが、卒業生保護者の皆様、お子様の御卒業、心からお祝い申し上げます。皆様には3年間PTA会員として、本校の教育活動に温かい御理解とお力添えをいただきました。本校教職員を代表して厚く御礼申し上げます。

 卒業生の皆さん、本日まで育てていただいた保護者やお世話になった皆様に感謝の心を忘れず、本校の校章に由来する鵬のごとく、それぞれの世界に向けて飛び立ってください。皆さんの御健勝と御活躍を心からお祈り申し上げ、式辞といたします。

 

 令和三年三月十日

 埼玉県立浦和北高等学校長  佐藤智明